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香龍会へ (二)

AM 11:18
 とりあえず建物の周りを一周した。そのとき大きな公園が建物の裏側にあることに気がついた。遊んでいるのは白い球を蹴ってあそんでいる親子とボーイスカウトのような服を着た五人ほどの子供だった。
 しばらく見ていたが子供の集団はいなくなり親子二人が残った。相変わらず球を蹴って遊んでいる。
 しかしどうも球の跳ね方がおかしい。目を凝らしてよく見ると、それはタマゴ形をしたラグビー用のボールだったことに気がついた。

AM 11:32
 なんとなく、ここ周辺に何があるか把握しておこうと考えた。
 公園を去って五分ほど歩くとコンビニを発見した。食料はここで調達するといいだろう。中に入って長野県と違うところを見つけようとしたが見つからなかった。
 コンビニの位置を覚え、またしばらく古くなったアパートや寺の横を通りすぎていくと一人の自転車に乗った男が目に入る。缶の袋を大量に乗せているところから察するにホームレスだろうと考えた。暇つぶしになると思いその後を追った。

AM 11:56
 相手が自転車なのでこちらも自然と早足になる。距離を二十メートル以上を保ってとっているので気づかれることはないと思ったが時々まわりを見渡すので、そのときはひやっとした。
 横断歩道の前で自転車は止まった。信号は青になっているのに。
 怪しみながらも少しずつ近づいていった。
 信号が点滅する。男は自転車に乗りペダルをこぎ始めた。
 しまった と思った。これは尾行をかわすテクニックの一つ。気づかれたか。
 全力で走り出す。信号は赤に変わった。なんとか横断歩道に入って向こう側に行き着いた。
 そのとき、信号待ちをしていた運転手から睨まれた気がした。

AM 12:20
 ホームレスとの死闘は続いていた。直線では自転車の方が有利である。足も疲れてきて追跡を終わりにしようとしたとき自転車は小道へ曲がった。そして小さなブレーキ音。
 影からのぞくと何か店に袋を置いている男が目に入る。店主らしき人にあいさつをしていた。そしてその作業が終わるとまた自転車に乗って出発した。
 そうであることは最初から予想していたが、残ったのは激しい疲労感だけだった。

AM 12:38
 先ほど見つけたコンビニで弁当を買い、公園に戻って一番驚いたのは、あの親子がまだ公園にいたということだ。そんなに楽しいのかまだ球を蹴り続けている。日曜の家族サービスということで頭を納得させた。
 ここ本陣に来て一番辛かったのは弁当を食べるときだったと断言できる。弁当の中身が嫌いなものとかそういうことじゃない。そもそも自らそれを買う人はいないだろう。
 それでは僕を苦しめたものとはなんだったのか。
 
風だ。顔に切りつけてくる鋭い風。

 建物の中で食べればいいと考える人はいるかもしれない。しかし僕はあえてそれをしなかった。建物の中には喫茶店がある。そこで堂々と弁当を食べれば店の人はおろか周りの客はどう思うだろう。
『見て、あの子』『ここをどこだと』『見たことないな』『ほら・・・・・・最近の子供は』『教育がね・・・・・・』『何なんだ』『外にベンチがあるじゃないか』『お客さんに迷惑だわ』『どこか行ってほしいものだね』『どうする』『連れ出せ』『始末しましょう』『殺れ』『殺せ』『殺せ』『殺せ」『殺せ』・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 僕は人の目を異常に気にする正確で、勝手に人の心の声が聞こえてくるのだ(最後のほうはホラー小説の読みすぎです)

 こんな話がある。
 あるレストランに老人が入ってきた。ウェイターは老人の席へ行き、注文をとろうとした。しかし老人はカバンから弁当を一つ取り出した。そしてウェイターにかまうことなくそれを食べ始めた。ウェイターはそれを見ていたがしばらくして「ご注文はありますか」とたずねた。老人は「水を一杯」と言った。ウェイターは水を持ってきてまた老人のそばでじっとしていた。老人は弁当を食べ終わると「勘定は」とたずねた。ウェイターは「いいえ、結構です」と答えた。すると老人は「ここはとてもすてきな店だ。また来るよ」と言って立ち去った。

 僕のカバンの中にはいろいろなものが入っていた。
 まず本や財布、携帯電話など。
 そして買ってきた弁当。  
 
 最後に蓋が開けられた一本のジュース。

続く
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プロフィール

かめぞうさん★

Author:かめぞうさん★
詰将棋作家のかめぞうです。

趣味は将棋と読書
好きな詰将棋作家は堀切良太さん。
創作は中学一年生の頃から始めました。作風は不明

好きな小説家は綾辻行人さんと貴志祐介さん。
中二の頃から熱中し、現在の購入本数は約百冊。叙述トリックが大好きで、今は古典を集めている。

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